女性の泌尿器科
女性は、身体構造、月経・妊娠・出産などから膀胱炎や排尿障害をはじめとした泌尿器疾患の発症リスクが高いとされています。泌尿器科受診には抵抗を感じる女性の方も多いのですが、当院では皮膚科の診療も行っていますので気軽に、安心して受診していただければと思います。
女性の泌尿器科受診でよくある症状
- 頻尿(しょっちゅうトイレに行きたくなる)
- 夜間頻尿(就寝中に尿意で目が覚める)
- 尿漏れ
- 我慢できないほど強い尿意が突然起き、トイレに駆け込む
- 水音を聞いたり冷たいものを触ったりすると急に強い尿意を起こす
- 急な激しい尿意が起こり、トイレに間に合わないことがある
- 尿の勢いが弱くなった
- 残尿感があってスッキリしない
- 排尿中や排尿後に痛みが起こる
- 血尿(尿に血が混じっている)
- 健診などで尿潜血や蛋白尿の指摘を受けた
- 性交痛がある
- 外陰部に異物感や不快感、灼熱感などがある
など
女性の泌尿器科で多い病気
膀胱炎
細菌が膀胱に感染して炎症を起こしている状態です。急性膀胱炎では、排尿の最後にツンと来るような痛みを起こす排尿痛が特徴的な症状であり、他にも頻尿や残尿感、血尿などを起こすこともあります。耐性菌が増えてきていますので、原因菌や抗生物質の感受性に関する培養検査を行うことで適切な治療に繋げていきます。しっかり完治するまで治療を続ける事が重要であり、症状が緩和したからと途中で治療を中断してしまうと耐性菌ができてしまい、完治まで長期間かかってしまうことがありますので注意が必要です。
また、再発を繰り返しやすいので、しっかり水分を補給し、尿意があったら我慢せずにすぐトイレに行くことを心がけましょう。
骨盤臓器脱
骨盤内にある臓器は、骨盤底筋群に支えられることで正しい位置を保っていますが、加齢や出産などのダメージによって骨盤底筋群が緩み、臓器の位置が下がってしまう骨盤臓器脱を起こすことがあります。膀胱が圧迫されて頻尿や尿漏れをはじめとした排尿障害を起こすことが多く、降りてきた臓器が膣の粘膜越しに触れることもあります。骨盤底筋群は適切なトレーニングによって鍛えられますので保存療法を基本に、状態によっては手術による治療も検討します。
過活動膀胱
膀胱に尿がほとんどないにも関わらず激しい尿意が起こる状態で、トイレに間に合わず失禁してしまうこともあります。膀胱の知覚過敏、加齢、ストレス、自律神経のバランスの崩れなどの要因が関与して発症するとされており、日本では40歳以上の約1割が過活動膀胱であると考えられています。
適度な飲水量を保ち、膀胱訓練や骨盤底筋群のトレーニングや薬物療法による治療で改善させていきます。
尿道カルンクル
外尿道口にできる良性のポリープ(できもの)で、サイズは数㎜程度です。お尻側に出来やすく、無症状のことが多く、尿を出しにくい、尿が飛び散るなどで発見されることがあります。また、頻尿や痛み、尿道カルンクルからの出血を起こすこともあります。
ステロイド軟膏による治療が有効ですが、改善しない場合には手術を検討します。
閉経関連性器尿路症候群(GSM)
閉経によって女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下し、外陰部や膣、下部尿路が萎縮することで様々な症状を起こします。外陰部の痒み・乾燥・におい・灼熱感、頻尿・急激な尿意・尿漏れ・排尿痛、性交痛や分泌液の低下・オルガズム障害など、様々な症状を起こします。症状や状態に合わせて保湿剤や潤滑剤などによるケア、ホルモン補充療法などによる治療、漢方薬処方、骨盤底筋群のトレーニングなどを組み合わせることで改善が可能です。
尿失禁
咳やくしゃみ、ジャンプなどで瞬間的に腹圧が高くなった際に少量の尿漏れを起こす腹圧性尿失禁、水音などの刺激で突然激しい尿意を生じてトイレに間に合わないことがある切迫性尿失禁、尿意があっても尿をうまく出せずに少量ずつ漏れてしまう溢流性尿失禁、排尿機能には問題がなく運動機能や認知などに問題があって漏れてしまう機能性尿失禁に分けられます。
中でも発症数の多い腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁では、薬物療法や骨盤底筋群のトレーニングなどによって改善が可能です。
間質性膀胱炎
膀胱の内側の粘膜が慢性的な炎症を起こしており、頻尿や尿意の切迫・亢進、膀胱痛などの症状を生じます。症状だけでは一般的な膀胱炎や過活動膀胱などと間違われてしまう可能性が高いのですが、当院では膀胱鏡検査を行って特徴的なハンナ病変の有無を調べます。(組織診断は行っておりません。)ハンナ病変がない場合には膀胱痛症候群と診断されます。
薬物療法を行いますが、コーヒーや紅茶、チョコレート、香辛料など特定のもので症状が悪化する場合がありますので、生活習慣の見直しも重要です。症状が強い場合には手術を検討します。
腎機能障害
急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)に分けられ、腎臓への血流が不足して生じる腎前性腎不全、炎症や薬などの影響で生じる腎性腎不全、尿の流れが阻害されて排泄できないことから生じる腎後性腎不全などによって生じます。
急性腎障害では尿量低下、むくみ、全身倦怠感などの症状が現れますので、すぐにご相談ください。慢性腎障害は自覚症状に乏しく、治療が困難になるほど進行してから尿量低下、むくみ、息切れ、倦怠感などが生じます。
腎盂腎炎
腎臓が細菌感染を起こして炎症を生じている状態です。頻尿や残尿感などの症状が起こり、進行すると高熱、吐き気や嘔吐、背中の痛みなどの症状を生じます。高熱があって喉の痛みや咳などがない場合には腎盂腎炎が強く疑われますので速やかにご相談ください。血尿や尿の濁りを生じることもあります。重症化すると敗血症などを生じて命に関わる可能性もありますので、糖尿病の方、高齢の方など免疫力が低い場合は特に注意が必要です。
尿路結石症
腎臓で作られた尿が通る尿管・膀胱・尿道といった尿路に尿の成分が固まった結石ができる疾患です。細い尿管に結石が詰まると尿の排出ができなくなって背中や腰に激しい痛みを起こします。結石のある部位によって、頻尿、排尿痛、血尿などの症状を起こすことがあり、尿の流れが阻害されることで急性腎盂腎炎を発症した場合には高熱・吐き気や嘔吐などの症状を起こすこともあります。位置やサイズを検査で確かめ、それに合わせた治療を行います。
膀胱がん
内側に広がる表在性膀胱がんと外側に広がる浸潤性膀胱がんに分けられ、主に膀胱の内側にある尿路上皮に生じます。表在性膀胱がんは転移を起こしにくい傾向がありますが、再発率が高いとされています。浸潤性膀胱がんは、転移を起こしやすく悪性度の高いがんと考えられています。初期に痛みを伴わない血尿を起こすことが多く、早期であれば内視鏡による切除も可能です。早期発見が重要ですので、血尿や健診の尿検査で尿潜血陽性指摘を受けたら、できるだけ早くご相談ください。
腎臓がん
腎臓がんの危険因子は肥満や高血圧、喫煙が多く、遺伝や長期の透析などであり、50歳以上の男性の発症が多いがんです。初期には自覚症状に乏しく、進行すると血尿や腹部のしこりなどを生じます。ロボット手術による治療を行うケースが増えてきており、転移を起こしている場合にも高度医療機関で様々な治療が可能になってきていますので、疑わしい場合は早めにご相談ください。
神経因性膀胱
尿を溜めて排尿するといった膀胱の機能をコントロールしている脳・脊髄・末梢神経などの神経に原因があって排尿障害を起こしている状態です。尿を溜める・排尿する機能の切り替えがうまくできないことで、頻尿、尿意消失、尿漏れなどの症状を起こし、尿が膀胱内に長時間留まることから尿路感染症や腎機能障害発症のリスクも高くなります。
難治性のケースが多い疾患ですが、薬物療法やカテーテルによる治療を地道に続けていくことで長期に渡って感染を予防し、腎機能をできるだけ守ることが重要です。
性感染症
性行為によって感染する疾患の総称で、代表的な性感染症に淋菌やクラミジア、梅毒、尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、HIV感染症、毛ジラミ症などがあります。近年、性感染症発症者数の増加が指摘されており、オーラルセックスによる喉への感染も多くなっています。性感染症で女性に現れやすい症状には、おりものの増加やにおいの変化がありますが、感染しても無症状というケースが多くなっています。症状がないまま進行して卵管狭窄などを起こし、将来の不妊に繋がる可能性もあります。妊娠している場合には母子感染を起こすこともあります。パートナーが感染してご自分が無症状の場合でも、必ず検査を受けて感染の有無を確かめることが重要です。また、ご自身が感染している場合はパートナーにも必ず検査を受けてもらうようにしてください。